てらこやイズム 2024年夏 拡大版コラム

スマホに夢中の子ども

塾目線でズバリお話しします!
「スマホ」と「学力」の関係性について!

 ベストセラーにもなった「スマホ脳(新潮新書)」や「スマホが学力を破壊する(集英社新書)」などで紹介されているように、スマホの使用による学力の低下が深刻な問題となっています。
小学生でも高学年になるとほとんどの子が、中学生になるとほぼ全員がスマホを日常的に利用している今日この頃です。私自身が塾講師としての教育現場で感じる現実についてまとめさせていただきました。子どもたちのスマホ利用について考える一助になればと思います。

1.集中力の低下

 スマホ依存度が高い子で強く出る傾向として、集中力が途切れ途切れになりがちです。10分から15分で集中力が切れてしまいます。また、勉強を始めるまでのスイッチの切り替えが苦手な子が多く、パッとスタートができないことが多いです。
 スマホ依存をしている子の暗記力が低いというのは実はあまり感じていません。実際に、スマホ依存度が高い子であっても、暗記のテストで満点をしっかりとってきます。しかし、集中が途切れ途切れになるため、暗記にかなり時間がかかってしまうというのが問題になりがちです。
 また、中学生くらいまでの内容は、1科目ごとにある程度まとまった時間でやっていかないとあまり身につきません。スマホ依存度が高い子の勉強を見ていると、漢字をちょっとやったら、数学をちょっとかじって、その後、別の科目をちょっとやってと、つまみ食い型の勉強をしがちです。集中力が持たないからそのような勉強になってしまうのです。

2.計算ミスの増加

 スマホが小中学生に浸透した今日、特に強く感じるのが「計算ミスが増えた」ということです。特に、筆算でのミス、小数点移動のミス、分数計算のミスが多くみられます。
 ここでの一番の問題は、計算ミスによる自信の喪失です。A君が授業で先生の言われたように計算したとします。言われた通りの公式に入れて計算したのに、A君は計算ミスで答えを間違えてしまいます。するとどうなるでしょう。塾講師の目線では「ただの計算ミスだから注意したら大丈夫だよ」という話で流しがちですが、当のA君はそうではありません。「言われたようにやったのにできなかった」という気持ちが強くなり、自信がなくなったり、学習への不安感・不信感が強まり、勉強から遠ざかってしまうようになってしまいます。
 計算は算数だけではなく、社会や理科などでも必要になってきます。ここがぐらつくとどうしても勉強全体に影響が出てしまいます。

3.姿勢の維持・整理整頓が苦手

スマホを触っている時の姿勢を考えてみてください。かなりリラックスした姿勢ではないでしょうか。スマホ依存度が高い子はその姿勢が染みついてしまっています。姿勢が悪いことによる勉強への悪影響はいうまでもありません。
 また、幼いころからスマホ依存をしている子は、小さなころからスマホの画面内だけで生活しているため、現実世界での整理整頓・片付けがとにかく苦手です。必要のないプリントをいつまでも入れていたり、塾のカバンが前学年のワークでパンパンになっています。整理整頓・片付けができていないことで勉強の効率は下がっています。
 また、勉強内容の整理整頓も苦手なように感じます。苦手な子のやり方を見ていると、とにかく効率の悪いやり方をやっています。そして、それを指摘し、効率のいいやり方を教えるのですが、すぐに戻ってしまいます。整理整頓が苦手というより、整理整頓をしない状態が楽なのでそうしているという感じなのかもしれません。

4.当事者意識の欠如

 よく子どもたちに「学校のテスト範囲は何ページまで?」と質問するのですが、ほとんどの子がそれを回答できずにいます。また、日々の宿題範囲を把握していない子が山ほどいます。「家で宿題の範囲が分からない時はどうするの?」と質問すると「スマホで友達に聞けばいい」という返事が返ってきます。
 個人的に一番の問題と感じているのがここです。なんというか、他人事なのです。私が学生のころは、授業中に先生がぽつりと言う「出題ポイント」の匂いを必死にかぎ分けていました。これだけはメモしておかないと困るというものは必ずメモをしていました。だからこそ、授業内容が身になっていたのだと思います。
「後で聞けばいいや」というのは一見すると合理的に感じるかもしれませんが、それによって失っているものもたくさんあるということに気づいておいた方がいいかもしれません。


▶︎スマホと学力の関係性についての具体的な解決策

誌面ではスマホと学力の関係性について具体的な影響をお話してきました。ここからは、実際の解決策についてお話していければと思います。

①改善策1 勉強中にスマホから離すことを徹底する

 ベストセラー書籍「スマホ脳」では衝撃的な事例が紹介されていました。学生を3つのグループに分け「Aスマホを自由に触ることができるグループ」「Bスマホは触れないが鞄の中にあるグループ」「Cスマホを別の部屋に置いてきたグループ」で暗記のテストをしたところ、Aだけではなく、Bの学生も暗記力が著しく落ちたのです。
私自身の経験から申し上げますと、暗記力だけではなく、集中力や集中力に伴う計算力など、学習能力のほぼすべてが著しく低下していくと感じています。そのため、学習をするときにスマホは必ず別室に置くように心がけてください。勉強部屋にはスマホは持ち込んではいけません。子どもたちにスマホを手元に置いて勉強をすることは意味がないことだと伝えましょう。
 子どもたちの中には音楽や動画を流しながらの「ながら勉強」をする子がいます。言い切っておきますが、まったく意味がありません。スマホは勉強に関しては百害あって一利なしと思ってください。
 注意点として、スマホから離すことは、保護者の皆さんが責任をもって行うようにしましょう。子どもたちに任せてはいけません。子どもたちは隠し事の天才です。言っただけでは絶対にスマホを手元に持っていくことでしょう。中途半端にすることが一番よくありません。おすすめは、スマホ置き場、スマホ充電場所をリビングに設置することです。
 また、塾などに通っている場合、送迎の時間などでどうしてもスマホを持たせがちだと思いますが、できるだけお迎えの時間を事前約束しておき、スマホは塾にはもっていかないようにすることをおススメします。

親にスマホを預けて勉強する子ども

②改善策2 週末にデジタルデトックスを家族で実践する

 デジタルデトックスとは、決められた期間内、デジタル機器に一切触らないようにする時間をとり、現実世界でのコミュニケーションや五感や自然とのつながりに集中できるようにする取り組みのことです。 デジタルデトックスによって得られる効果は、気持ちがすっきりしたり、目の疲れが取れたり、睡眠の質が高まったり、脳の疲れ・ストレスが減ったり、心が安定したりといいことづくめです。そして、それらが子どもたちの学習や成長に有効であることは言うまでもありません。
 依存度が高い子には、思い切って休日まるまるデジタルデトックスを実践させてあげましょう。また、その際には家族一丸となって取り組むのがいいでしょう。子どもたちにだけ「スマホ禁止!」といいながら、お父さんお母さんがスマホを触っていたらなんだかおかしな話ですよね。
 子どもたちの中には「ログインボーナスだけやらせて!」などとゲームアプリのログインだけはやらせてほしいと頼み込んでくる子がいると思いますが、それには強く「NO」を突き付けてください。スマホアプリには継続させる仕組みがありとあらゆるところに散りばめられています。大人ですらそれに抗うことは難しいので、子どもたちが自発的にスマホをやめることなんてほぼ不可能だと考えてください。強く干渉を行わないとデジタルデトックスは中途半端に終わってしまいます。
 デジタルデトックスの経験談で、私の事例をお話しさせていただきます。数年前に、私は、歩いてモンスターを倒して魔王を討伐するアプリに夢中で毎日欠かさずログインをしていました。サービス開始直後から欠かさずやっていたので日々の習慣になってしまっていました。あるとき、2泊3日で冬の山にキャンプにいったところ、想定以上の外気温になってしまい、文字通り必死に防寒をしていたため、ログインをうっかり忘れてしまいました。1年以上欠かさず続けてきたことですが、生命の危機には敵わなかったようです。
 すると、そこからまるで憑き物が落ちたように「そんな必死にログインしなくていいや」と考えられるようになりました。そこからそのアプリはほとんど触っていません。

デジタルデデトックスをするなら徹底的に!

③改善策3 脱スマホの継続

 「スマホ脳」を読んだ翌日、私自身極端な性格なため、仕事で使用するLINE以外のSNSアプリをすべて削除しました。当時はFacebook、Instagram、TwitterとたくさんのSNSを使用していました。
 削除した翌日、気が付いたら再度Instagramをダウンロードしていた自分がいました。その後数週間にわたって削除してはダウンロードしてを繰り返しましたが、最終的にすべてのアカウントを削除することにして終着を迎えました。
 ここで感じたのは、脱スマホは徐々に毒が抜けていくような感じですすんでいくものだということです。最初はアカウントを削除することはどうしてもできない自分がいましたが、SNSを触らないようになっていくと、徐々に「まあ消しちゃってもいいか」という気持ちになっていきました。
 ①②も共に継続が大切です。1回2回ではすぐに戻ってしまうものです。繰り返し脱スマホを進めてみてください。

脱スマホは根気よく!

④皆さんが実践している脱スマホの工夫

 最後に、皆さんが実践している脱スマホの工夫についてご紹介させていただきます。

A.スマホの充電はリビング限定
 寝室に充電できる環境をつくると延々と使ってしまいます。なので、スマホの充電はリビング限定にしましょう。目覚まし時計替わりにしている方は、目覚まし時計に変えましょう。

目覚まし時計をかけて眠る子ども

B.食事中の使用からやめていく
 スマホ依存度が高い子は、スマホをみながらご飯を食べています。そのような傾向がある場合、そこからやめさせましょう。

C.スクリーンタイムを活用しましょう。
 スクリーンタイム設定をしてアプリの使用時間を制限しましょう。ゲームの制限をしがちですが、中学生くらいからはSNSの制限を徹底していきましょう。

D.コミュニケーションを増やしましょう
 スマホ依存度が高い子は家族とのコミュニケーションが少ない傾向にあります。子どもたちと積極的に会話をしていくことが脱スマホに繋がります。
目覚まし時計をかけて眠る子ども

 以上、スマホと学力の関係性についてとその具体的な解決策についてご紹介させていただきました。皆さんの子育ての一助となれれば幸いです。

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